FILE 206 ・京芸入試「色彩」の対策
1.京芸入試色彩対策「出題傾向の分析」より
■近年の出題傾向の分析
京芸入試の出題は、テーマ主導型(イメージ表現)、モチーフ主導型(モチーフ構成)、条件主導型(色彩構成)の3種類に大きく分けられます。20年度はモチーフとして紙(A3上質紙)が与えられましたが、内容から考えてテーマ主導型(イメージ表現)の出題であったといえるでしょう。近年の出題を振り返ってみると、15年度はモチーフ(ロープ)とモチーフにかかわるテーマ(結び目)が与えられ、そこから発想するモチーフ構成が出題され、16年度はモチーフ(みかん)と技法の指定(滲みの表現を取り入れる)が条件として与えられたモチーフ構成が出題されました。つまり、モチーフ+αの課題が2年続けて出題されたことになります。そして、17度はテーマ(流れる水)と条件(銀紙を貼り付け表現に取り入れる)、さらに18年度もテーマ(対比)と条件(黒白の紙を5枚に切り分け全て貼る)というように、テーマと条件両面からの発想が求められる課題が2年続けて出題されました。また、19年度は15~18年度とはまったく傾向の異なる幾何構成の課題が出題されています。このように、過去数年間だけを振り返っても、出題のバリエーションは多岐にわたっています。つまり、京芸入試にあたっては、様々な出題パターンに対応できるように対策していかなければならないのです。
作品例(合格再現作品) |
テーマ |
モチーフ | 条件 | 出題の特徴 | |
12年度 | 「透明」 | 垂直線・水平線のみ/平塗り | 幾何構成(条件あり)・画面分割と配色のみでテーマを表現する構成 |
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13年度 | 「花」 | 2画面/貼り絵 | イメージ表現(条件あり)・2画面構成を生かした表現 |
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14年度 | 「顔」 | イメージ表現(条件なし) |
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15年度 | 「結び目」 | 「マニラ ロープ」 |
モチーフ構成(テーマあり) |
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16年度 | みかん | 滲みの表現を取り入れる | モチーフ構成(条件あり)・滲みの表現を取り入れた表現 |
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17年度 | 流れる水 | 銀紙を貼りつけ表現に取り入れる | イメージ表現(条件あり)・銀紙の特性を生かした表現 |
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18年度 | 対比 | 黒白の紙を5枚に切り分け全て貼る | イメージ表現(条件あり)・黒白の紙を表現の中に効果的に取り入れる |
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19年度 | メロディ | 上下に9cm幅の余白 直線のみ・平塗り 直線の両端は解答用紙の端に接する 隣接する面同士は、同色にならないようにする |
幾何構成(条件あり)・画面分割と配色のみでテーマを表現する構成 |
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20年度 | 皺「しわ」 | 紙(A3上質紙) | 解答画面(30cm×30cm)指定 解答画面は全て彩色すること。 解答用紙余白部分には彩色しないこと。 |
イメージ表現(条件あり)・無彩色のモチーフ(紙)から有彩色の色彩作品を表現する。 |
■様々な出題傾向を踏まえた対策
入試対策ですから、当然出題傾向を踏まえた学習が大切です。しかし、京芸の出題傾向は実に多様で、「ここを押さえておけばよい」といった型通りな傾向はありません。ただし、近年の出題傾向を分析していると、京芸の出題課題に対する「評価の基準」が少し見えてきました。出題の形式を予想することはできませんが、どのような課題が出されたとしても、「テーマ・条件から作品の方向性を考えて制作することができているか」という点が、大きな意味を持つように思われます。つまり、近年の京芸入試に共通して求められている評価のポイントは、「対応力」だということができるでしょう。そして、その「対応力」を身につけるためには、やはり幅広い対策が不可欠となります。 入試において、唯一決定しているのは制作時間(3時間)です。制作時間内に余裕を持って作品を仕上げられる時間配分を、しっかりと身につけておきましょう。用紙サイズに関しては、持参するカルトンの大きさが四つ切大以上という指定が変更されない限り、四つ切大より大きな画面で出題される可能性は低いと思われます。
近年の出題を分類
①発想源による分類(テーマから、モチーフから、条件から)
14年度 | 20年度、15年度 | 16年度 | 18年度、17年度 | 13年度 | 12年度、19年度 |
テーマから | テーマとモチーフから | モチーフと条件から | テーマと条件から | テーマと条件から | テーマと条件から |
234/250 |
250/250 |
228/250 |
②表現スタイルによる分類(条件から)
20年度、15年度、14年度 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 13年度 | 12年度、19年度 |
指定なし | 滲みの表現を取り入れる | 銀紙を貼り付け表現に取り入れる | 黒白の紙を5枚に切り分け全て貼る | 2画面構成 (左)貼り絵 (右)彩色 |
幾何構成、彩色は平塗り |
250/250 |
248/250 |
238/250 |
228/250 |
③画材指定による分類
17年度、15年度、13年度 | 18年度、16年度、14年度 | 20年度、19年度、12年度 |
不透明水彩絵具、透明水彩絵具、色鉛筆 ※13年度は左画面が貼り絵 |
不透明水彩絵具、透明水彩絵具 | 不透明水彩絵具のみ (平塗り限定) |
④用紙サイズによる分類(四つ切大より大きな画面は出題されていない)
18年度、16年度、15年度、14年度、12年度 | 13年度 | 20年度 | 19年度 | 17年度、08年度 |
四つ切短辺画用紙 (四つ切大の短辺を一辺とする正方形画用紙) |
25㎝×50㎝ (2画面構成、一辺25㎝の正方形×2) |
四つ切画用紙 (中央に30cm×30cmの正方形を設ける) |
四つ切画用紙 (上下に9cm幅の余白) |
四つ切画用紙 |
228/250 |
228/250 |
242/250 |
- 1.京芸入試色彩対策「出題傾向の分析」より
- 2.京芸入試色彩対策「評価傾向の分析」より
- 3.過去10年間の京芸入試出題のまとめ